作家であるから、万年筆を使っている。 もっとも小説にしても、ノンフィクション作品にしても、雑誌への記事を書くにしても、現在では、パソコンのキーボードで文字を打ち込むようになってしまった。 よく驚かれるが、ワードは使わない […]
小学生の頃、集団登校する道ばたにアジサイの花が並んでいる路地があった。 小学生にとっては、雨の中に咲くアジサイは、桜の花よりも興味深かった。 花の色が変化する。 しかし一日のなかで色が変化することはなくて、もっぱら土壌が […]
お嬢様が苦手だ。 お茶の水のアテネ・フランセという学校で僕は英語を鍛えていた。 本当は、フランス語を勉強するつもりだった。 國學院大学で第二外国語にフランス語を履修したからだ。でも入学窓口で 「待てよ、その前に英語を鍛え […]
小学校1年生のとき、担任の鈴木瑠津子先生から、 「消しゴムを使うのはおやめなさい」 と言われた。 「消しゴムを使うのはまだ6歳の皆さんには、とても難しいことなのよ」 と言われた。 「間違えて書いてしまったことにこそ、お勉 […]
手紙やハガキを万年筆の直筆でよく出すが、まず返事をもらうことはない。 きっと相手は困惑しているか、迷惑しているんだろう。 僕には手紙についての著書がある。2002年に朝日新聞社から出版された。『心にひびく日本語の手紙』だ […]
時間がない。生きるのに時間が足りない。僕はあ然とする。 60歳の還暦を目前にして「果たして、あとどれだけ書けるのか」を考える。 あと10年もすれば、僕は執筆できなくなってしまうのではないか。 それは定年退職後に、老後の生 […]
僕はいま歯に包帯をしている。 歯周包帯とか歯周パックと呼ばれるモノで、ペースト状のガムみたいな素材を歯と歯ぐきとに伸ばして付着させる。 しばらくすると固まって、歯と歯ぐきを守る包帯になる。 歯周病の手術を受けた後などに、 […]
フレンチコーヒーに出会ったのは、20歳のときだった。 渋谷駅を降りて、國學院大学へ通う道とは正反対の方角にあるレジュ・ドゥというカフェに通い詰めた。 1978年当時で、小さなカップに1杯のコーヒーが500円だったから、な […]
僕は作家は、言葉を商う職人だと思っている。 そして言葉には、常に関心を持っているべきだと思う。 だから僕は、言葉についてよく考えることにしている。 さらにいえば、間違った言葉遣いをする、ましてや書くなどとは言語道断だと信 […]
ハックションは、ハックシャミから派生した。 この「くしゃみ」は「は、くさめ」から派生した。 「は」は空気を吸うときの口咽の自然音。 「くさめ」は「糞食め」とまじないの言葉を言ったもの。 古代の日本人は悪寒は、悪鬼悪霊の憑 […]